
5月中旬、午前9時から梁とスラブのコンクリートの流し込みが始まるとの連絡をもらう。 鉄筋を組みあげてコンクリートを打ち込む前の現場風景は絵になるのでは? という現場サイドの提案にさっそくカメラを持って出かけてみた。
朝礼後のわずかな時間を利用して現場に入る。さいわい雲の切れ間から青空が見え始め、天気も回復にむかう。すでに現場では職人さんが忙しく準備をしていた。
「川崎ゲートタワー」のマンション構造は一般的に多いといわれるRC構造だ。RC造とは英語のReinforced-Concreteの頭文字とってそう呼ばれる。
柱や梁などの主要構造部に鉄筋をいれたコンクリートを使ったもので、コンクリートは圧縮力に、鉄筋は引張力に強く、二つ性質を活かした構造体である。
地上にいるコンクリートポンプ車のブームが上空からこちらを窺うかのごとく伸びていた。フレッシュコンクリートを流すための用意をしている。このポンプ車のブームももう2フロアーほど建物が高くなると届かなくなるので、次は階段室横のEVシャフトに配管を仕込んで、下からコンクリートポンプ車を使ってそこから圧送する計画になっている。
高層マンションを造るということは、住民が心地よく住める住宅を造るのみならず、いかに効率よく工事が進められるかという「設計の実現性、施工の合理性」が重要であると説明を受ける。そのためには、設計の早い段階から施工担当が、設計に加わり工事をどのように進めるかという打合せが、図面をひく傍らで行われるのである。したがってこの規模の高層マンションになると、経験や知識、また施工のノウハウを併せ持たない設計事務所ではできないという。
現場には余分な道具がなにもない。端的にいって工事は、地面から足場を組み、型枠を鉄筋の周りを囲んで、そこにコンクリートを流し込むということの積み重ねなのだが、現場に置いてあるものといえば、鉄筋と型枠にシンプルな形状の道具だけである。それだけで最終的に22階の高層マンションが組み上がっていくのだから不思議だ。
最初にコンクリートを打ち始める地点に移動する。そこには高周波の振動で型枠内にコンクリートを締め固めるバイブレーターや鏝(こて)などの道具が置かれていた
。
「コンクリートは生き物、手順をきちんとこなすことによって表面が平滑になっていく。今日の気候ならばコンクリートは3〜4時間で固まり始める。その間の作業が肝心で、左官でならしプロペラで抑える作業を3工程行う。柔らかいうちに何回も何回も抑える。これでぎっしりと詰まった、平滑なコンクリートとなる。精度を出すのは最終的には人間の手作業に頼るしかないんです」
何気ない工事現場ではあるが、こうして説明を受けてみると、高い技術の専門性と手作業の緻密さでマンションをつくっているのが分かる。マンションの供給側のミッションは一生の買い物をする住民の夢を叶えることでもある。それに、安全性、快適性、資産価値などの要素が入り、ますますその責任は重大だ。そういった価値を提供する立場ならではの、建築に対する現場の人たちの思いを感じた。
現場ではこのあと9時からコンクリートの流し込みが行われるため、最終チェックをしていた。
タワークレーンの柱越しに、フレッシュコンクリートを離れた場所から圧送する折りたたみ式ブームが見える。福島第1原発で冷却につかわれたものより小型のもの。もう2フロアーほどで、ブームが届かなくなる。その後は階段横に敷設した配管からコンクリートポンプ車でフレッシュコンクリートを送る。
(左)打たれたコンクリートの表面をならす鏝(こて)。(右)高周波バイブレータ